しかし,ともすると「現象」「出来事」「事実そのもの」「統計から得られるデータ」などを調べるのみにとどまって,それを成し遂げた人間の働きにまで目を向けずに学習を終わらせている実践が,未だに数多く行われているのではないか,と感じるのです。確かに,子どもが興味・関心を抱く事実やデータは世の中にたくさんあります。それを学習内容に取り上げ,調べていくことが無意味だとは思いません。しかし,しょせん子どもたちには一つの事実に関わる社会的な背景やしくみなどを包括的にあるいは分析的にとらえることはできないのです。抽象的な事象,内容が理解できないままノートへ丸写しした事柄などをいくら学習に生かそうとしても,子どもが「なるほど!分かった!!おもしろかった!!!」という喜びに至ることは困難です。そして多くの子どもたち(例外的な子どももいますが)にとっては,内容に対する興味・関心の持続すら至難の業だと思うのです。これでは社会科が楽しい教科になるはずがありません。子どもたちが家へ帰って,社会科でどんな学習をしているか,目を輝かせながら保護者の方にお話するようなことは起こり得ません。こんな子どもたちをもつ保護者の皆さんが,「丸暗記社会科」のイメージから脱却できないのも無理はないのです。 | |