「総合的な学習の時間」における
児童・生徒の調べ方およびその特性

2000.1.12更新


前ページへ戻る
 「総合的な学習の時間」で児童生徒が実際に行う調べる活動(探究活動)。その「調べ方」として様々な活動が予想されます。
 私が今まで取り組んできた社会科実践の経験から,また,最近学んできたことから,「調べ方」とそれらのもつ特性についてまとめてみました。あくまで教師が認識しておく内容であり,この表をもとにいずれかの活動を児童生徒へ押しつけるために運用するわけではありません。誤解のないように…。
 分類の仕方やその特性の捉え方等,難しい面も多々あり,完成品だとは考えていません。皆さんの御意見を仰ぎながら,さらに役に立つ表に仕上げていこうと思います。掲示板または電子メールで,どしどし御批判をください。お待ちしています。
調べ方
良さ
問題点
個人持ちの図書資料 ・自分だけでゆっくり調べられる
・購入すればいくらでも資料は増える
・思うに足りる資料が揃いにくい
・個人負担の費用
・目的意識が明確でないと「丸写し」の作業に終わりやすい
図書室等の図書資料 ・必要に応じて豊富な資料を入手可
・図書室へ行ってじっくり調べられる
・膨大な蔵書から的確に必要な情報を得ることの難しさ
・新しい書籍・資料が整備されているかどうか(要事前確認)
・目的意識が明確でないと「丸写し」の作業に終わりやすい
教師が用意した資料 ・必要な情報を含んだ資料の用意可
・児童生徒が主体的にその資料を求めているのであれば有効
・児童生徒の意識が受動的になると学習効果が上がらない
・こればかりだと情報収集に関するリテラシーを育成することができない
新聞・雑誌・広報誌・パンフレット等 ・必要な情報を的確に入手可
・比較的新しい情報が掲載されている・児童生徒が主体的に収集可
・子ども向けの記述でないものは,調べた事柄を自分のものにしていくことが困難(「丸写し」の懸念)
教師への質問 ・必要な情報を的確に提供したりアドバイスしたりすることができる・これが多い間は児童生徒の主体的・発展的な学習の芽を摘む場合がある
ビデオ等のマルチメディア教材 ・児童生徒の興味関心を保ちながら調べ学習を展開することが容易
・文字情報や静止画のみの資料よりも具体的で分かりやすい
・教材の内容にもよるが,人間の工夫・努力,生き方等もとらえられる
・図書資料に比べて,事実を細かく丁寧に情報収集するメディアとしては不向き
・あくまで間接体験。映像を見たことによって,児童生徒が直接体験をしたかのような誤解をもって学習を終えることは大きな問題
インターネット ・世界中の情報を居ながらにして得ることができる
・児童生徒からすれば,興味関心が大変高いメディア
・子ども向けの検索サイト,情報提供サイトも急速に充実してきている(国策として急成長の分野)
・児童生徒のレディネスでは,実際に検索したり情報を得たりできるサイトが限られている
・全て正しい情報ばかりが掲載されているとは限らない
・あくまで間接体験。児童生徒が直接体験をしたかのような誤解をもって学習を終えることは大きな問題
自宅での聞き取り


※人材活用
・じっくりと情報収集できる
・家族に対する認識を新たにしたり,家族でのコミュニケーションの場を提供できたりする
・一般性,普遍性のある情報かどうかが一概には判断できない
外部人材への取材


※人材活用
・専門家のような立場の方に直接お話を伺うことができ効果的
・取材内容だけでなく,その人の生き方,取材に当たっての約束の仕方,マナー等,その活動の中でしか身に付かない基礎基本が多い
・相手の都合に合わせて取材の場を設定しなければならないこと
・児童生徒の交通事故等に対する安全面への配慮が確保できない
ゲストに来てもらう




※人材活用
・専門家のような立場の方に直接お話を伺うことができ効果的
・取材内容だけでなく,その人の生き方,マナー等,その活動の中でしか身に付かない基礎基本が多い
・学校内での活動なので,上記に比べて時間を有効に活用できる
・その場にいる児童生徒の人数にもよるが,一部の者の活動が中心となり 「お客さん」に終わる者も増える
・お話の内容が簡潔・的確でない場合も予想できる
・実際に校外へ出る場合に比べて,活動の中でしか身に付かない基礎基本が少ない
電話で取材





※人材活用
・直接お話ができるので,実際に会うのと同じような臨場感や学びがある
・尋ねたいことを絞り込んで臨めば,的確に情報収集ができる
・他メディアと併用すれば,情報収集量は増大する
・顔が見えない分,相手に気持ちやニュアンスが伝わりにくく,うまく取材が進展しない場合あり
・相手の都合を考えたとき,大変失礼になってしまうことも予想できる
・得られた情報は単なる「文字情報」に等しく,それを活用する児童生徒の表現力や判断力が学習の成否の鍵を握る
ファクシミリで取材




※人材活用
・尋ねたいことを絞り込んで臨めば,的確に情報収集ができる
・直接専門家のような立場の方に尋ねられるので,実際に会うのと同じような臨場感や学びがある
・他メディアと併用すれば,情報収集量は増大する
・あらかじめ他メディアでアポイントメントを取っておかないと,的確な情報は収集できない(即時性が案外無い,ある程度人間関係が構築されていないと相手にされない場合が多い)
・得られた情報は単なる「文字情報」に等しく,それを活用する児童生徒の表現力や判断力が学習の成否の鍵を握る
電子メール(含:電子掲示板)で取材


※人材活用
・尋ねたいことを絞り込んで臨めば,的確に情報収集ができる
・直接専門家のような立場の方に尋ねられるので,実際に会うのと同じような臨場感や学びがある
・相手にアポイントメントを取っていれば,即時性が高い
・他メディアと併用しなければ,的確な情報は収集できない(ある程度人間関係が構築されていないと相手にされない場合が多い)
・得られた情報は単なる「文字情報」である場合が多く,それを活用する児童生徒の表現力や判断力が学習の成否の鍵を握る
手紙を通して取材




※人材活用
・尋ねたいことを絞り込んで臨めば,的確に情報収集ができる
・直接専門家のような立場の方に尋ねられるので,実際に会うのと同じような臨場感や学びがある
・相手にアポイントメントを取っていなくても,質問者の意図や思いが伝われば有効な取材ができる
・質問が帰ってくるまでには相当な時間がかかる
・得られた情報は単なる「文字情報」である場合が多く,それを活用する児童生徒の表現力や判断力が学習の成否の鍵を握る

◎ 体験的な学習活動を通して行う「調べる活動」については,「調べ方」の分類が難しいため,この表の記述からは除外しています。